1 この規定の必要性について
(1) この規定の適用は、有線、無線を問わず、デジタル化されたネットワーク環境において公衆送信(送信可能化を含む。)及び公衆送信に伴う複製により著作物を利用することをいい、主としてインターネットを中心としたネットワーク上における著作物利用を主眼に置いています。
(2) こうした著作物利用は、先の業務用通信カラオケとは別に、パーソナル・コンピュータや携帯電話等の急速な普及と、その手軽さや自由さのために急速に拡大しました。これに伴い、著作権法では、公衆送信権(送信可能化を含む)に関する整備が迅速に行われたものの、著作権者としての利用許諾条件である使用料規定の制定が遅れているため、ネットワーク上に違法なファイルが蔓延するという憂うべき状況を招来しています。
(3) 一方、インタラクティブ配信ビジネスを行う、いわゆる音楽配信事業者が出現し、適法に音楽を利用するための使用料率をはじめとしたルールを早急に定めてほしい、という強い要請がこれら事業者から上がりました。これらの声を集約する形で、多くの音楽配信事業者が加盟する団体(MIDIデータ等電子音楽の普及振興に努める社団法人音楽電子事業協会や電子ネットワーク協議会等)の集合体として、平成9年8月、ネットワーク音楽著作権連絡協議会(以下NMRCという。)が任意団体として組織され、当協会はNMRCとの間で使用料のあり方に関する協議をすることになりました。
(4) 当協会は、これまでNMRCとルール作りに関する協議を重ね、平成10年11月、平成12年3月と2度の暫定合意により、有料配信に関する料率を定め、許諾を行ってきました。この使用料率は、インタラクティブ配信における唯一のルールとしてNMRC加盟の有無に係わらず音楽配信事業者に広く受け入れられ、約90事業者に及ぶ、ほぼすべての有料配信事業者(平成12年3月現在)がこれに基づき許諾を得、適法に有料音楽配信事業を行ってきております。このたび認可を申請する規定のうち、有料音楽配信に係る使用料の率、額及び取扱いについては、それまでの協議結果に基づいて決定した内容を、ほぼそのまま踏襲しております。
(5) 一方、情報料を得ずに無料で著作物を利用する場合の使用料率はこれまで定められていなかったため、無料のインタラクティブ配信においては、著作者の権利保護も利用者の利用の円滑も図ることもできない状況が長く続いておりました。
(6) この無料での著作物利用につきましては、協議団体がない一方、個人利用者を対象とすることになりますので、適用の範囲の広さは有料利用の場合の比ではありません。そこで、著作物使用料規程として認可を得ることが、円滑な利用のためのルールを構築するために不可欠であると考えます。インターネット利用者の急増とともに日々利用許諾を求める要請が当協会に寄せられているところでもあり、一日も早い対応が社会的にも求められているところであります。
(7) 個人の無料利用につきましては、その使用料のあり方を協議すべき団体が存在しませんが、有料配信に係る協議の過程でNMRCからも参考意見を伺いつつ、当協会として使用料額や取扱いを決定しました。
(8) これらのことから、今後の利用の円滑と権利者の著作権保護を実現するため、新たに「インタラクティブ配信」の規定を本規定として認可申請することとしました。

2 第13節の規定の使用料率等とした理由
(1) 規定の形式としては、受信先に著作物データが残る「ダウンロード形式」と残らない「ストリーム形式」に大きく分類し、料率及び評価方法に差を設けております。
(2) 「ダウンロード形式」につきましては、さらに情報料がある場合、情報料が無く、広告料等収入がある場合、情報料及び広告料等収入のいずれもない場合の3つに分類しました。
(3) 情報料がある場合とは、具体的には最も典型的な音楽配信事業者が想定され、情報料を徴収して音楽をネットワークで配信する形態です。この場合、複数の支分権が働く利用形態の使用料としてNMRCと協議した結果、情報料の7.7%にリクエスト回数を乗じて算出するものとして決定しました。また、この場合の下支え額として、7円70銭を設定しております。
(4) 規定と順序は異なりますが、情報料及び広告料等収入のいずれもない場合を先に説明します。情報料及び広告料等収入のいずれもない場合とは、具体的には、企業等の組織や個人が開設したホームページにおいて、外部からの収入を得ずに音楽を配信する形態が想定されます。この場合の額は、情報料がある場合で説明しました額よりは少ない額であるべきであるとは考えますが、従来の単独の支分権に基づく使用料と著しく乖離するものであってはならないことから、ダウンロード1曲1回当たりの使用料の額5円50銭を設定しました。さらに、非営利法人等が営利を目的とせずに行う場合は、営利企業と違い、リクエスト回数を把握することが難しい場合があるので、包括的に使用料を定め、その範囲内で自由に音楽を利用できる料率も選択できるよう設定しました。
(5) 同時に送信可能化する曲数を10曲までとしているのは、同時に送信可能化する曲が10曲までであれば、どれだけ曲を入れ替えても、またときには曲数が2_3曲になっても、包括的な許諾の範囲である、という意味です。誰でもが容易にインタラクティブ配信を行う(止める)ことが出来るという実態から、すぐに許諾の範囲を超えてしまうことのないよう定めたものです。
(6) さらに、一般ユーザーとしては、自らのホームページへのアクセス・ログを管理できる立場にいないことの方が多く、リクエスト回数で使用料を評価することが物理的にできない、という場合が一般的なので、リクエスト回数によらない年額定額制の規定を設けました。
(7) ここで設定しました年額50,000円という額は、アメリカの演奏権団体が適用している最低使用料額(年間500ドル)を参考に設定したものです。
(8) さらに、個人利用の円滑を図るため、より低い使用料年額10,000円を(3)3として設定しました。この額の設定につきましては、NMRCからの、「インターネット・サービス・プロバイダに対して個人が支払うインターネット接続料(つなぎ放題で月額2,000円前後)の額を超えるような使用料は到底社会的には受け入れられない」との示唆を受け、設定したものです。
(9) なお、着信メロディの配信であるものについては、個人によるデータの提供がすでに相当の規模になっており、実質的に営利目的の配信事業と競合する実態となっていることから、私的な利用に着目した使用料負担の軽減規定からは除外し、3(1)の規定を適用することとしております。
(10) 次に、情報料がなく、広告料等収入がある場合ですが、具体的には企業等の組織や個人が開設したホームページにおいて、外部からの広告料等収入を得て音楽を配信する形態が想定されます。広告料等収入の取扱については、現状では、情報料に依存して行われることが通例である「ダウンロード形式」の利用において、どれだけ広告料等収入が寄与しているのかについて、今しばらく実態をみながらの検討を要するため、「ダウンロード形式」で情報料がある場合は、広告料等収入を原則として評価しないこととしましたが、情報料はないものの広告料等収入がある場合には、利用者の負担や収入に応じた公平の観点から、それらのいずれもない場合とは異なる使用料の取扱いを設ける必要があります。すなわち、広告料等収入がある場合は、それは直接的な著作物提供の対価ではないにせよ、著作物を提供する機能を持つホームページ上の番組に係る収入であることは確かであると考えます(著作物の提供以外の目的の収入であるとしたい場合には、著作物を提供する番組を広告の対象となっている番組から分けることは容易にできるからです。)。そこで、情報料も広告料等収入もいずれもない場合に対して、広告料等収入を定額で評価することとし、情報料がある場合の額との兼ね合いも検討しつつ、6円60銭を定めました。曲数の考え方や定額制を置くことについては、情報料や広告料等収入の無い場合と同じです。
(11) 「ストリーム形式」については、「ダウンロード形式」とはビジネスの実態が異なり、情報料を徴収しない又は低額とする等広告料等収入に依存していることから、情報料及び広告料等収入を加算した額に一定の比率を乗じる方式を採用しました。
(12) 次に情報料も広告料等収入のいずれもない場合ですが、この場合は年額又は月額の規定を設置しました。「ストリーム形式」の場合は特定の曲が何回リクエストされたかは把握できないことが一般的であることから、年額又は月額の使用料で当協会の管理楽曲全てについての包括的な許諾を与える方式を採用したものです。
(13) 非営利団体による営利を目的としない利用及び個人利用につきましては、利用の円滑に配慮するため、それぞれ段階的に減額規定を置きました。

3 規定の運用について(備考の解説)
(1) (1)から(4)までを用語の定義等としました。インタラクティブ配信の実態に即して、この規定での定義を設けました。
(2) (5)及び(6)において、リクエスト回数ごとに使用料を算定する場合に月額使用料の下支えに当たる定めを設けました。したがって、リクエスト回数が0回の場合には、結果的にこの額が送信可能化に係る額のようになってしまいますが、複合的に権利が働く利用形態においては、必要な措置と考えます。
(3) (7)については、2(1)でも述べたとおり、インタラクティブ配信の場合も、リクエストがなくても利用される全ての曲が自動公衆送信装置に送信可能化されて楽曲の選択肢として提供されていることは明らかであるため、複合的に権利が働く利用形態の特質にかんがみ、当協会としては徴収した使用料にはそれらの評価も含むことを明記したものです。
(4) (8)及び(9)は、使用料算定の単位を定めております。ここでの定義は、やや柔軟ではありますが、許諾実務や利用者側の認識として、この部分はむしろ柔軟性がある方が例外の生じる心配が少なくわかりやすい規定となるものと考えております。
(5) (10)は、ダウンロード方式で利用の制限がある場合について3つの定めを設けております。(ア)及び(イ)はいわゆるレンタル形式と呼ばれるもので、一定の制限を超えると受信側で利用できなくなる形式であり、このような利用については、下支えの額を減額することとしました。なお、率について変更していないのは、一般にレンタル方式の場合、価格設定そのものが下がりますので、下支えとの比較上、率は変更する必要はないものと考えたためです。(ウ)につきましては、電話機への着信メロディ・データの配信について個別に定めたものです。この着信メロディ・データはもともと非常にデータとしても小さく、利用目的としても音楽を鑑賞することより、自分の電話が着信している合図と識別の用途に使われるものであるため、NMRCからの強い減額要請もあり、下支え額を5円としたものです。
(6) (11)から(14)までは、「情報料」に関する定義と取扱いを定めております。(13)につきましては、NMRCからの要望として、無謀な価格競争を牽制する取扱いとして設置を希望されたものです。また、(14)の後段につきましては、案分計算をする場合、著作物を利用している番組の数に対して、いたずらに著作物を利用していない番組の数を増やして使用料を低く抑えようという方法に対抗するため、著作物を利用していない番組はいくつあっても1としか勘定しない旨を定めたものです。
(7) (15)については、本節の使用料を免除する場合を定めております。 (ア)、(イ)においては試聴によるプロモート効果によって、例えばCDの販売促進につながるなどにより関連する著作物使用料の増加が期待できることになるので、仮に試聴を使用料免除としても著作権者の利益は確保されること、また、(ウ)、(エ)につきましては、インタラクティブ配信自体が非常に簡便にできることから、著作権者や著作隣接権者自らが、自らの作品や演奏をプロモートする有効なツールとして着目されていることに鑑み、特別の取扱いとして設けたものです。もちろん、関係権利者の権利侵害がないことを前提としておりますので、例えば原盤の権利を有する者に無断で著作権者が試聴させることはできないことは言うまでもありません。
(8) (16)、(17)については、従来の規定の取扱いに倣い、歌・曲が、歌詞、楽曲それぞれ同時に利用されている場合で、歌詞又は楽曲のいずれかの著作権が消滅、又は当協会の管理外のときの取扱いを定めることにより、1曲の使用料は詞・曲あわせてのものであることを確認的に規定しました。
(9)

(18)については、従来の規定の取扱いに倣い、著作者人格権上の問題が生じうる広告利用については、本規定によらない取扱いが別途できるよう設けたものです。

(10) (19)については、情報教育の推進を図る政策に配慮し、学校教育、社会教育を含めた教育機関のうち、営利を目的としないものにおいて、その教育の一環として行われる利用については、使用料を減額し、別に定めることとしました。
(11) (20)については、インタラクティブ配信は、通信インフラの整備状況や新たな技術の導入により非常に急速に利用の状況が変化したり、全く新しいサービスが登場することが予測されます。こうした利用については、本規定を直ちに適用するのではなく、その利用の実態等を総合的に勘案し、実態に合った料率を定めるなど、柔軟な対応が必要であると認識しております。そこで、本項をもって、本規定の使用料率又は額により難い場合はその取扱いを別途定められることを明記するものです。
(12) (21)については、(20)と同じ趣旨で、本規定の有効性が数年後も維持されているかどうか、現時点では不確実であるため、本規定の適用期間を明記しました。

4 施行期日について
(1) 有料の音楽配信については、NMRCの暫定合意以後ほぼ同内容でこれまで許諾をしてきている実績があり、認可後速やかに実施することとします。
(2) ただし、無料の利用に係る1(2)、(3)、2(2)の規定、及び備考(6)、(19)については、対象となる利用者が個人や学校等の教育機関、地方公共団体等非常に広範囲に及ぶため、現在、ネットワーク上における音楽利用の監視システムの開発しているところであり、利用実態を把握し、十分な周知を図った上で公平な管理を行うことが必要であるため、平成13年4月から使用料徴収を開始する予定です。
以上


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